Apemanさんの記事で知りました。
TBSクイズ番組の件
TBSのお笑い系クイズ番組で戊辰戦争時の会津若松城開城の理由が「糞尿たまり開城」が正解としてでたそうだ。わたしはテレビを見ないのでこの番組も未見だが、asahi.comのニュースによると会津若松市は放送前にこの内容を知り、再三抗議をしたが聞き入れられなかったとのこと。
会津若松市、TBSに抗議 戊辰戦争「糞尿たまり開城」(asahi.com)
2008年03月28日20時20分
問題としているのは、2月16日夜に放送された「歴史王グランプリ2008まさか!の日本史雑学クイズ100連発!」。この中で、戊辰戦争の際に旧幕府側が会津若松城を明け渡した理由を問うクイズの正解が「糞尿(ふんにょう)がたまり、その不衛生さから」と紹介された。
市によると、放送前に内容を知り、再三見直しを要求したが聞き入れられなかった。放送直後からは「抗議すべきだ」とのメールが市民から殺到。市議会からも毅然(きぜん)とした対応を求める声が出たという。
市側は抗議文で「開城は、同盟諸藩の降伏で他藩の応援の望みが絶たれたことや、籠城(ろうじょう)による物資の枯渇など様々な要因が重なったためだ」と番組の正解を批判。同日記者会見した菅家一郎市長も「義を貫く会津武士道に生きた先人と若松城を郷土の誇りとしてきた、すべての会津人の心情を踏みにじるものだ」と怒りをあらわにした。
わたしは日本史は詳しくないし、幕末明治維新頃はほとんど新撰組ネタのマンガぐらいの知識しかない。しかし篭城してた城が開城する理由が「糞尿たまり」だけでないことくらいは、ちょっと考えればわかる。100年以上前の戦争中の衛生状態が劣悪なのは当然だし、物資の不足、他からの援助が絶望的なったこと、増えていく死者、などなど、いろんな要因が集まって、開城という決断になったんだろう。そうゆう極限状態で決断し、死んでいった人たちがいて、今もその子孫がたくさんいるのに、この番組のクイズと答えでとリビア的笑いを取るという構成はあまりに無神経と思う。
最近本屋の歴史コーナーに行くとこの手の歴史トリビアを集めたような本が目に付く。「恐怖の●●史」とか「本当は笑える●●史」なたいなタイトルの本たち。いくつか手にとってぱらぱらと、自分がある程度詳しい部分(イギリス史とかね)を読んでみるのだが、毎回あまりにも記述が「点」であることにうんざりするのだ。つまりそれ自体は「こわい話」だったり「笑える話」だったりするのだが、そこに至る過程「どうしてそんなおかしな/こわい自体になったのか」といった記述がほとんどない。わたしが知っているわずかなネタについてがこの調子なのだから、他の知らないネタについても、記述スタイルは同じだろう。
問題の
TBSの番組サイトにはこうあります。
お堅いばかりが「歴史」じゃない!歴史好きじゃなくても笑えて、思わず驚く、珍エピソードが盛りだくさん!小学校でも、中学校でも、塾でも教えてくれない興味津々の「歴史雑学」!歴史と聞くと思わず、苦手だと言う人も、この番組を見たら明日から歴史好きに!!
「お堅いばかりが「歴史」じゃない!」というのは賛成だし、歴史には笑えるエピソードもたくさんあるのもたしかだ。しかしこうゆう番組ではたして「歴史好き」になるんだろうか?
「歴史トリビア好き」にはなるかもしれないが、それでは酒の席の薀蓄語り屋になるだけである。
断片化した「点」の知識は、他の知識とリンクせず体系化していない。そんなトリビア的知識の寄せ集めは、記憶術の訓練にはなるかもしれないが、物を考えるときにはほとんど役に立たないか、間違った結論を出すかだろう。
歴史をトリビアの断片にすることは一見歴史の普及に役に立っているようで、実際は物事を関連付けて考えること放棄し、歴史とこの世界を蝕むように感じる。
この考えない、想像できない、という図は歴史修正主義やニセ科学信望者の「答えだけ知りたがる」という態度に通じている。
■追記
検索したら会津若松市長さんのブログに抗議文がアップされてあるのを見つけたでリンクします。
【 TBSテレビ番組への抗議 】
抗議文の画像とワード文書があります。
いや…その番組のことは知りませんでした。
こういうトリビア、雑学が悪いとは言いませんが、テレビの影響力はものすごく大きいので、こんなふうに簡単に単純に答を出されるのは困るな…
最近の世の中が、とにかく何でも答を決めたがる風潮だから尚のこと。
書籍でも、何分でわかる歴史とかそういうタイトル見るとうんざりしますよ。
糞尿というのを笑い事にできるのは、いま平和な世の中しか知らないからなんだろうな…とも思いました。(ほんとはそれだって笑い事ではないですよ。そしてそれは平和な世の中に生きていて実際にそれを知らなくても想像することはできるはずです。)
だからそれを「たったひとつの答」として視聴者に送ることに何の疑問も持たないのではと。
しかし事前に抗議があったにも関わらず(しかもたった100数十年前のことで、会津といえば「この前の戦争というのは第二次世界大戦ではなく、戊辰戦争のことをいう」ってくらいなのに)そのまま流すなんて…
テレビ業界に関しては特にワイドショー関係があまりにひどく(内容もですけど出演者の口調がいつも断定的で魔女狩りになってしまっているので)見るに耐えない(家族が見てますが…)のですが、総じて感じることは(どんなジャンルでもですが)迎合している…っていうことですね。でも大衆に迎合しているように見えて実際はそういう大衆を作っているのもテレビなんだよなあ…とテレビ大好きな家族を見てると思います…
(なんだかエントリのテーマからはずれたことまで書いてしまってすみません)